• コラム

技術書のヨミカタ #4 学びの定着(ノートへの記録と整理)

 技術書を読むと知識を得られた気分にはなりますが、ただ読んだだけでは、時間とともに記憶が薄れていきます。この学んだことを自分の記憶として定着させ、実務で使えるレベルにするために、学んだことを記録していつでも使える状態にすることを考えます。

 たとえば、ちょっとしたメモを「ノート」としてまとめて残す方法や、継続的に学ぶための仕組み、そして次の一歩としてコミュニティへの参加まで、実践的な方法を紹介します。

学んだことの記録

 第2回では、技術書を読む際のメモの取り方について解説しました。しかし、このとき作成したものはあくまでも「メモ」であり、断片的な記録です。大切なのは、このメモをそのままにすることなく、あとで見返して実際に使える形に整えることです。

 この保存先は紙の手帳でもデジタルノートでも構いませんが、検索性やバックアップの観点からデジタルノートをおすすめします。最近は Notion や Obsidian といったツールがよく使われており、ノートを効率よく管理できます。

 ノートを作るときは、単に保存するだけでなく、すぐ使える形にすることを考えます。たとえば、よく使うソースコードやコマンドをスニペットとして保存したり、テンプレートとして整形したりしておくと管理が楽になります。このとき、ノートにタイトルと概要を書くだけでなく、入力や出力の例を併記しておくと実用的です。

 そして、複数のノートをバラバラに保存するのではなく、関連するノートをうまくまとめて保存することが重要です。このとき、マインドマップのようなものを使う方法もありますし、NotionやObsidianなどのタグやリンクといった機能を使って、似た概念のノートにすぐにアクセスできるようにしておきます。これにより、共通となる考え方から個別の考え方、全体と部分といったつながりを一目で把握できます。  

すぐに使えるようにする

 ノートとしてまとめたものの、それで終わっては整理するのにかけた時間が無駄になってしまいます。どれだけ綺麗にノートを整理しても、それが使えないのでは意味がありません。つまり、記録した知識は見返すだけでなく使えるようにすることを考えます。

 たとえば、よく使うコードはノートに書くだけでなく「スニペット」として記録する方法があります。このとき、GitHub Gistのようなサービスを使う方法や、Raycastのスニペット機能を活用する方法などが考えられます。

 また、学んだことをブログやQiitaなどで公開して、他の人が参考にできるような形にすることもあります。人の目に触れることを考えると、誰が見てもわかるように文章としてまとめることから、自分の知識の整理にもつながります。そして、アウトプットすると、他の人から意見をもらうこともあり、自分だけでは気づかない視点や課題に気づくこともあります。

 大事なのは、「再利用のしやすさ」と「発見されやすさ」です。どのような名前をつけるのか、どういった場所からリンクするのか、どういうタグで検索するのか、といった方針を決めておくと、検索性も高まります。

▲「TechLib」のハイライト機能のメモを使って、外部ツールにまとめた先のURLを記載しておけば、書籍とツールを連携させた使い方もできる。

次の一歩

 入門書で基礎的な内容を学んだら、あとは専門書や逆引きの本を読んで深掘りしていきましょう。第2回で解説したように、複数の本を読み比べる、読み進めることが有効です。書店では似たテーマの本が棚の近くに並んでいますし、「TechLib」のようなサービスでは読んだ本と似たテーマの本が近くに表示されます。多くの書籍には章末や巻末に参考文献がまとめられているので、それらを読む方法もあります。

 もちろん、書籍だけでなく論文や公式ドキュメントを読む方法も有効です。最初は論文を読むのは難しく感じるかもしれませんが、専門的かつ最新の内容を理解するには必須です。特に、最近のAIなどに関するものは書籍が発行されるのを待っていては時代の変化に対応できないこともあります。

 それでも新しい書籍の発行に気づき、次の学びに繋げていくためには、インターネットの活用は欠かせません。SNSで出版社や著者をフォローしたり、読書管理サービスでキーワードを登録したりしていると、新刊を通知してくれることもあります。ここから知識を広げていく方法もあります。 

▲「TechLib」には基礎的な入門書から逆引き系のタイトルも様々なものが掲載されている。レベルにあわせて読み進めたり、目的にそったタイプの本をいろいろ探して読めるところは、サブスクリプションサービスならではの利点だ。

継続学習の仕組み

 次々と新しい技術が登場する中で、学びに終わりはないため、学習を続けられるようなる仕組みを考えます。学習のモチベーションを保つ方法はいくつかありますが、その1つが「可視化」です。

 たとえば、これまでにどれだけ学習したかを時間で記録し、棒グラフや折れ線グラフ、ヒートマップなどで表示するとよいでしょう。子どもの頃にスタンプを集めてモチベーションが高まったように、学習記録が増えていくのは楽しいものです。

 また、他の人と一緒に学ぶことも有効です。勉強会やもくもく会など、さまざまなイベントに参加するだけでもモチベーションが上がります。そして、機会があればLT(ライトニングトーク)などで発表すると、発表の準備がアウトプットのきっかけになります。

 そして、他の人との質疑応答により、自分だけでは気づかない視点で考えられるようになります。 


~以上、4回に渡りお届けしました「技術書のヨミカタ」いかがでしたでしょうか。増井さんの技術書活用術を、皆さんのエンジニアライフにいかしていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。


技術書のヨミカタ #1 読む前の準備

技術書のヨミカタ #2 効率的な読み方

技術書のヨミカタ #3 実践的な読み方

著者:増井敏克

https://masuipeo.com

技術士(情報工学部門)、ビジネス数学検定1級、TechFeed公認エキスパート。#センイチブックスにて棚主。テクニカルエンジニア(ネットワーク、情報セキュリティ)、その他情報処理技術者試験にも多数合格、「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発を行っている。
ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとしても活動している。

著書

『「技術書」の読書術』翔泳社
『ITエンジニアのフリーランス独立戦略 前職やエージェントに頼らない働き方』インプレス
『プログラマ脳を鍛える数学パズル』翔泳社
『プログラミング言語図鑑』ソシム
『RとPythonで学ぶ統計学入門』オーム社
もっとプログラマ脳を鍛える数学パズル アルゴリズムが脳にしみ込む70問』インプレス
『図解まるわかりデータサイエンスのしくみ』翔泳社 …など

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